2025.06.28ブログ:Yoshiizumiの部屋
その愚痴、鍛えられてるのは顎だけです──空気を濁す前に知ってほしいこと
私たちは、誰かの機嫌や言葉に、日々少しずつ影響されながら生きている。
とくに職場では、一人の態度や言動が、その場の空気全体を左右することがある。
にもかかわらず——
「私は関係ない」「自分は正しい」と思い込んでいる人が、じつは周囲に大きな“負荷”を与えていることも少なくない。
感情の乱れや、イライラ、不満——
それらがいつしか言葉や態度に染み出して、職場全体をどんよりさせていく。 それに、本人だけが気づいていないということも。
悪影響は、じわじわと広がる
「別に怒ってないけど?」という態度。 「私ばっかり大変」という空気をまき散らす背中。 無意識のため息。
こうした些細な言動が、まるで職場に“見えない霧”をかけていく。 言葉はなくても、空気は伝わる。
人は感情を持った存在だからこそ、「何かおかしい」「話しかけづらい」と感じると、距離を取ろうとする。
そしてその“距離”は、チームの連携や支援の質にも影響してくる。
「自分が変わればいいんでしょ?」ではなく
ありがちなのが、「どうせ私が悪いんでしょ」と拗ねたように口にするパターン。 でも、それでは何も変わらない。
必要なのは、“自分の影響”にまず気づくこと。
自分の感情が周囲にどう伝わっているか、 それがチームにどんな空気をつくっているか、 いま一度、振り返ってみる。
その視点があるだけで、関係性は少しずつ変わっていく。
場にいるだけで、影響している
「発言してないから関係ない」では済まされない。
沈黙や視線、表情一つでさえ、その場の空気に影響を及ぼしている。
チームには、目に見えない「気配」がある。
そしてその気配は、誰かひとりの不機嫌にも、誰かひとりのあたたかさにも反応して、日々かたちを変えていく。
場にいるだけで、すでに“関与”しているのだ。
愚痴が顎マッチョを育てる──そして、周囲を疲弊させる
「言わなきゃやってらんない」「誰かに聞いてもらいたい」——
そんな気持ちも理解できる。だが、繰り返される愚痴は、いつしか“自分の物語”として固定化されてしまう。
「わたしはこんなに大変」「こんなにやってるのに」
そうした物語は、自分を正当化し、他者を責め、無意識に被害者意識を強化する。
結果として、自分の顎だけがどんどんマッチョに鍛え上げられていく。
「愚痴の筋トレ」は、いのちの循環を止めてしまうのだ。
そして、気がつけば—— 周囲の誰かが静かに疲弊して、離れていく。
声には出さなくても、「ここにはいたくない」と、心を閉ざしていく。
人は、物語のなかで生きている。でも、物語ではない
心理学者・河合隼雄氏の言葉を借りれば—— 「人は物語で生きている。でも、決して物語そのものではない」。
つまり、「わたしはこういう人間だから」「いつもこうだから」という思い込みが、自分自身を縛ってしまう。
でも本来、人間はもっとしなやかで、変化しうる存在だ。
誰かが優しくされたら、誰かにやさしくなれるように、 空気は伝わる。感情も、気配も、連鎖する。
「こうあらねば」より、「今、どう在るか」。
まとめ:まずは、自分の“気配”を整える
場の空気を変えるのは、大きな言動ではなく、小さな“気配”だ。 無言の圧より、無言のやさしさ。
「あなたがいてくれると、ほっとする」 そんな存在になるためには、自分の感情のクセや、
語りがちな物語を、一度棚卸しすることから始めたい。
気を抜くと、すぐに愚痴は顎を鍛える。 でも、やさしさだって鍛えられる。
自分の言葉が、どこかで誰かの気持ちを沈ませていないか。 その“問い”を、日々の足元に置いておこう。

顎マッチョにはなるな!
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