2025.06.05ブログ:Yoshiizumiの部屋
「仕事」が、人を救う瞬間を、僕は見た。
ある利用者さんがいた。あまり話さず、いつも俯いていて、
こちらが声をかけても「……うん」とだけ返す日々。
でも、ある日。朝の掃除をしていた職員が、 ポツリと「おはようございます」と言ったとき、
彼女が、ほんの一瞬だけ、笑った。
それだけだった。
でも、そこにすべてがあった。
その笑顔をきっかけに、僕の中にひとつの確信が芽生えた。
「この場所に、人を変える力がある」 それは、派手な支援でも、劇的な改善でもなく、
たったひとつの“まなざし”から始まるものだった。
福祉という「仕事」は、なんのためにあるのか
僕たちは、なぜこの仕事を選んだのだろう。 福祉は、利益率の高い業界ではない。
責任は重く、制度は複雑で、現場はいつもギリギリだ。
でも、そこに踏みとどまるのは、単なる優しさではないと思う。
この「仕事」には、人間の根っこに触れる瞬間がある。
それは、誰かの役に立つことだけではなく、 誰かと“ともにいる”ことを通して、 自分自身が問われ、磨かれていく感覚だ。
仕事とは、単なる労働ではなく、 「誰かと世界をつなぎなおす行為」なのかもしれない。
「ただそこにいること」が、仕事になる
僕たちはつい、役に立たなきゃって思ってしまう。 何かをしてあげなきゃ、意味がないって。
でも、実際には、 「ただそこにいること」「関係が続いていること」が、 誰かの心の支えになっていることがある。
目に見えない“関係”が、人を支えている。
ある日ぽつんと聞いた言葉。 「ここに来ると、安心するんです」
その人にとって“安心”とは、 肩書きでも、資格でもなく、 「ここで自分が受け入れられている」という実感だった。
ああ、これが“救う”ってことなのかもしれない。 そう思った。
報酬の前に、仕事がある
忙しい。人手が足りない。 クレームも入る。予算も厳しい。
それでも、僕たちは出勤し、目の前の人と向き合う。
そのときに動かしているのは、「使命感」なんて重たい言葉より、 もっと静かな、でも確かな「納得」かもしれない。
この仕事を通して、自分は“人としてどうありたいか”。 その問いに向き合いながら、毎日を重ねていく。
「あの人の、あの笑顔が見たい」 そう思えるのは、仕事を超えたところで、 その人の“存在”と触れ合っているからだと思う。
“救われてる”のは、自分かもしれない
ある日、退去された利用者さんの家族が ふと立ち寄ってこう言った。 「ここで最期を迎えられて、よかったって、思えるんです」
そのとき、自分の胸が少し熱くなってるのに気づいた。
悲しみの中にも、感謝と穏やかさが混じったその言葉に、 こちらが救われてしまった。
救っているようで、救われてるのは、自分だった。
仕事とは、誰かを支えるふりをしながら、 実は、自分の背中を支えなおしている営みなのかもしれない。
「仕事」じゃなく、「かかわり」が救う
僕たちの仕事は、“成果”では測れない瞬間に価値がある。
それは、 ・名前を呼ぶこと ・同じ空間で過ごすこと ・手を添えてお茶を飲むこと
そのすべてが、“ただの仕事”を超えていく。
そして何よりも、 「あなたがここにいてくれてよかった」 そう思える瞬間が、互いの中に生まれるとき、
そこには確かな“つながり”がある。
福祉の仕事って、 実は「生きる」と「生きる」が、触れ合う場所なんだと思う。
自分の人生と、誰かの人生が、 交差して、響き合う場所。 それが、僕たちの現場なのだと思う。
まとめ
「仕事」が人を救う。 でもそれは、 ・特別なスキルじゃない ・高い報酬でもない ・正解を出すことでもない
“関係”をつづけること。 “その人らしく”を、諦めないこと。
そして、 「自分はなぜこの仕事をしているのか」 という問いを、逃げずに持ち続けること。
それが、僕たちの現場で生まれる、小さな奇跡。
きっとそれは、職員一人ひとりの中にも、起きている。
今日、あなたが誰かにかけたその一言が、 誰かの心を、ふっと軽くしてるかもしれない。
そんなふうに信じられる日々を、僕は生きていたいと思う。
それが、福祉であり、 それが、「かかわりの力」であり、 そしてそれは、仕事の本質そのものなのだと思う。

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