2025.10.07ブログ:Yoshiizumiの部屋
強いも弱いもない
「この人は強い人だね」
「自分はメンタルが弱いからダメなんだ」
そんな言葉を日常で耳にすることがあります。
それは褒め言葉であったり、自己評価であったり、時には諦めのような響きを帯びていたりもします。
けれど、そもそも“強い”とか“弱い”って、いったい何を基準にしているのでしょう?
泣かない人が強くて、泣く人は弱い?
怒る人は弱くて、耐える人が強い?
踏みとどまる人が強くて、倒れる人は弱い?
その線引きは、実のところとても曖昧で、人間という存在の複雑さを語るにはあまりにも単純です。
今回は、「強さ・弱さ」という言葉が持つ誤解をほどきながら、もっと自然体な「人の在り方」について考えてみたいと思います。
「強さ」は外からは測れない
よくある誤解の一つに、「あの人は全然泣かないし、我慢強いからメンタルが強い」という見方があります。
けれどそれは、本当にその人の“内側”を見ての評価ではないかもしれません。
もしかしたら、その人はただ「感情を出すことに慣れていない」だけかもしれませんし、
「強くあらねばならない」と自分を押し殺している状態かもしれません。
また逆に、よく涙を見せる人、愚痴を言う人が「弱い」わけでもありません。
感情を外に出すことができるというのは、実は一種の柔軟性や自己開示力の証でもあります。
見えているものだけで、その人の“強さ”を判断してしまうのは、とても危ういこと。
本当の意味での強さとは、“外からは測れないもの”だと心得ておきたいところです。
「弱さ」はそのままで価値がある
私たちはどこかで「弱さ=悪いこと」という認識を持たされて育ちがちです。
泣いたらダメ、迷ったらダメ、頼ったらダメ。
そして「自立」「努力」「克己心」などの言葉を美徳として叩き込まれてきました。
でも、弱さは人間の一部です。
それを持っていること自体が“悪”なのではなく、
むしろ弱さを感じられるということは、自分の感受性に正直であるということでもあります。
誰かを信頼できること、恥をさらせること、助けを求められること。
それらは「弱さ」ではなく、「人間関係を結ぶ力」です。
“弱さ”を排除しようとすると、人は孤立していきます。
逆に、“弱さ”を持ち寄ることができたとき、人はつながりを得るのです。
タフネスと繊細さは両立する
「打たれ強い」「図太い」そんな言葉は、時に賞賛として使われます。
たしかに、過度なストレスに押し潰されずにいられる心の持ちようは、大切なものです。
でも、それと同時に「繊細さ」「感受性の鋭さ」も、同じくらい重要です。
何かに傷つくということは、それだけ物事に対して深く受け取っているという証拠。
“鈍感でいられること”だけが強さではありません。
本当にしなやかな人とは、繊細な感性を持ちながらも、それに潰されずに生きられる人。
つまり、“タフさと繊細さを両方抱えた人”ではないでしょうか。
強く見せることに必死になるよりも、弱さを含んだ自分を受け入れて、うまく調整していく——
それこそが成熟した“強さ”だと言えるのかもしれません。
比べても、意味がない
「自分はあの人に比べて弱い」「もっとしっかりしなきゃ」
そんなふうに他人と自分を比べては、自分を否定してしまうこと、誰しも経験があると思います。
でも、人それぞれ「育ってきた環境」も「抱えている荷物」も違います。
つまり、“同じフィールドで戦っていない”のです。
人と比べて「弱い」と感じる必要はありません。
むしろ、あなたの“つまずきやすさ”や“揺らぎやすさ”は、そのままであなたらしさでもある。
比較をやめたところに、ようやく「自分のリズム」が見えてくる。
それは、他人の拍子に合わせて無理やり踊ることをやめた人だけが知っている、自由なテンポです。
その人のままで、尊いということ
私たちは「できるかできないか」「勝つか負けるか」で人を測ろうとしがちです。
けれど、ほんとうの意味での人の価値は、「存在している」という事実そのものに宿るものではないでしょうか。
誰かがそばにいる。
ただ一緒に時間を過ごしてくれる。
何もできなくても、言葉がなくても、その人がそこに“いてくれる”ということ。
強くても弱くても、その人であることには変わりない。
だから、何かを証明しなくても、がんばらなくても、
「そのままでいいよ」と言える空気を、わたしたちは少しずつ増やしていけたらと思います。
まとめ
「強いも弱いもない」
それは、「強さも弱さも、必要ない」という意味ではありません。
むしろ、「強い・弱い」というラベルにとらわれすぎず、
もっと自由に、自分らしく、生きていこうという提案です。
誰かが「強くあろう」としているとき、
誰かが「弱さを抱えている」とき、
私たちは、すぐに判断せず、そのまま受け止める視点を持てるでしょうか。
強く見える人の中にも、脆さはある。
弱そうに見える人の中にも、芯の強さはある。
だからこそ——
「強いから良い」「弱いからダメ」なんて、もう言わなくていい。
その人らしさが尊ばれる場所を、私たち自身がつくっていきましょう。
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