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2025.08.05ブログ:Yoshiizumiの部屋

『死ぬまでにしたい10のこと』──“いま”を生きる私たちへ

2002年公開の映画『死ぬまでにしたい10のこと』。
スペインの女性監督イザベル・コイシェが描いたこの作品は、派手な演出も涙を誘うような音楽もありません。
それでも観終わったあと、じわじわと心に残る。
まるで静かに沁みる手紙のような、そんな映画です。

物語は、23歳の若い母・アンが、余命わずかの宣告を受けるところから始まります。
彼女はその事実を誰にも伝えず、こっそり「死ぬまでにしたい10のこと」をノートに書き出します。
家族と普通に暮らしながら、そのリストをひとつずつ実行していく。
これは、病気の話ではなく、“どう生きるか”の物語です。

自分に残された時間を知ってしまったとき、人はどうやって「日常」と向き合うのか。
そして、何を選ぶのか。
それを、アンの姿を通して、私たちに静かに問いかけてくるのです。

彼女のリストに並んだのは、“愛”のかたち

アンが書いたリストには、いわゆる「やりたいことリスト」とは少し違う内容が並んでいます。

夫に新しい恋人を見つけてほしい
子どもたちの未来に向けた手紙を書く
誰にも言わずに、美容室に行って髪型を変える
他の男性と恋に落ちてみる
カセットテープに自分の声を録音して残す

それらは「野望」でも「夢」でもありません。
誰かのためであり、自分のためでもある。
彼女は、「死ぬ前に全うしたい愛のかたち」を、淡々と実行していきます。

ここにあるのは、“すべてを背負おうとした母の強さ”ではなく、
“限りある時間を知った女性としての、正直な感情”なのです。

「もし明日が来ないとしたら」──そう思ってみると、今日が変わる

この映画を観ながら、自然と自分自身にも問いが浮かんできます。

もし、あと1週間しか生きられないとしたら。
私は何をしたいだろう。
何を言いたいだろう。
そして、誰に会いたいだろう。

忙しい毎日のなかで、そんなことを考える余裕なんてない、というのが現実かもしれません。
でも実は、その「余裕がない」日々のほうが、アンのように“あと何日かしかない”とわかっている状態よりも、
ずっと盲目的なのかもしれません。

働くとは、誰かの役に立つこと。
でも、生きるとは、“誰かを大切に想いながら、今日を過ごすこと”だと、私は思います。

感情を持ち込んではいけない場所なんて、本当はない

私たちの仕事の現場でも、日々いろんな感情が湧いてきます。
「なんで私だけ」「疲れた」「ちゃんと見てほしい」
誰にも言えない気持ちを抱えながら、それでも笑って現場に立っている人が、たくさんいる。

でも、映画の中のアンのように、自分の気持ちを正直に見つめることは、決して“甘え”じゃありません。
むしろ、自分の感情を無視し続けることのほうが、よっぽど危うい。

「大丈夫なふり」を続けるより、
「本当はこう思ってた」と一度だけ立ち止まってみる。
そんな日があっても、きっといいのです。

10のことを、いま書いてみる勇気

もし、あなたが「死ぬまでにしたい10のこと」を書くとしたら。
そこに書くのは、「世界一周」や「宝くじを当てる」ではないかもしれません。

毎日お弁当をつくってくれる人にありがとうを言う
帰り道に空を見上げる
今さらだけど「ごめんね」と言ってみる
自分の好きなことを、堂々と話してみる

そういう、ささやかで具体的なことが並ぶ気がします。
そしてそれは、「死ぬまでに」ではなく、「今からでも」できること。

この映画は、「どう死ぬか」を描いているように見えて、
実は、「どう生きるか」を教えてくれる作品なのだと思います。

働く日々の中に、感情と向き合う余白を。
“終わり”を想像することで、“いま”を丁寧に生きたくなる。
そんな映画でした。

チームの空気が、少しずつ冷えていく。
誰かが悪いわけじゃない。だけど、みんなが疲れている。

そんな現場で、もう一度立ち上がるために──
『傷ついたチームが、もう一度立ち上がるとき』
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