2025.06.26ブログ:Yoshiizumiの部屋
「人は物語で生きている」
私たちは、物語のなかで生きている。
それは小説や映画の話ではない。
自分の人生そのものが「ひとつの物語」として語られ、意味づけられ、時に書き換えられながら進んでいるということだ。
心理学者・河合隼雄は言った。「人は物語によって生きている」。 この言葉が、ある日、深く胸に響いた。
なぜなら、理屈では説明しきれない感情や、正しさでは測れない選択に、人は何かしらの“物語”を必要としているからだ。
物語があると、人は動ける
日常のなかで「なんのために生きているんだろう」と感じる瞬間は、誰しもある。
朝起きて、働いて、食べて、寝る。 繰り返される生活のなかで、ふと自分を見失いそうになることもある。
そのとき、私たちは「物語」を求める。
「子どもに背中を見せたい」「いつかこの経験を誰かに話したい」
「ここを乗り越えたら、自分は変われる」 そんな言葉が、心の奥でささやかに囁いている。
それは“意味づけ”というより、 “自分を支える物語”とでも呼べるものだ。
物語があるから、今日もまた一歩、前へ進める。
過去を語り直すことの力
河合隼雄がもう一つ、大切にしていたことに「語り直し」がある。
「私って、ずっとダメな人間だったんです」
そう語る人が、ふとしたきっかけで 「でも、あのとき支えてくれた人がいたから、いまがあるんです」と語り直すことがある。
過去は変えられない。 けれど、過去の“意味”は変えることができる。
物語は、その人の人生の「見え方」を変える。 ただの事実ではなく、感情があり、つながりがあり、希望がある。
語り直すことで、自分の物語に光が差すことがある。
物語を取り戻すということ
時に、組織や社会のなかで、人は「役割」だけで語られがちになる。 「◯◯さんは事務担当」「△△さんはリーダー」
もちろん、それも必要な“名札”だ。
でも、名札の下にある“物語”こそが、その人を人たらしめている。
たとえば——
・高校時代、吹奏楽で全国大会を目指した経験
・子どもを育てながら夜学に通った日々
・失恋で落ち込んでから、立ち直るまでの自分
それらは、履歴書には書かれない。 だけど、確実に“その人らしさ”をつくってきたものだ。
人が元気をなくすとき、それは「自分の物語」が見えなくなったときかもしれない。
だからこそ—— 人の話を聴くときは、物語を聴くように。 自分の調子が出ないときは、自分の物語を思い出すように。
物語は、いまのあなたを支える力になる。
まとめ:問いは、物語を育てる
問いかけが、物語を育てる。
「なぜ、いまここにいるのか?」 「どんな自分でありたいのか?」
こうした問いに、正解はない。 でも、それを考える時間は、確実に物語を豊かにしてくれる。
会社のなかでも、家庭のなかでも、誰かとのやりとりのなかでも。
私たちは、無数の“言葉にならないストーリー”と共に生きている。
だからこそ—— 物語を信じる目を持ちたい。 人の語りに耳を傾け、自分の語りを大切にしたい。
それが、誰かの人生にやさしく灯る、静かな光になると信じている。

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